3級商業簿記 4.1.2 株式会社の取引 損益・剰余金の扱い

本日は、株式会社の損益・剰余金について、執筆していきます。

 

株式会社の損益

株式会社の純損益

損益勘定から繰越利益剰余金勘定(純資産の勘定)へ一旦振り替える。

個人企業のように直接資本金への振り替えは行わない。

 

繰越利益剰余金を計上する理由

利益の使い道を出資者(株主)と一緒に決める必要があるため。

ここで、個人企業と株式会社の利益の扱い方を見ていこう。

 

個人企業と株式会社の利益の扱い

個人企業の利益

事業主の元手をもとに生み出されたもの。

言い換えると、すべて自分の資金で事業を行い、利益が発生しているといえる。

このため、事業者が利益の使い道を決めることができる。

個人企業の損益関係のイメージ

 

株式会社の利益

一方、株式会社の利益は、多数の出資者(株主)の出資金によって生み出されている。

このため・・・

・出資と経営の分離により、事業主=出資者とは限らない。

・株式会社の所有者は出資者(株主)のものである。

・利益は全て事業主のものではない。

上記のことから、出資者(株主)が集まり、利益の使い道を決める必要がある。

ちなみに、出資者(株主)が集まる場を株主総会という。

株式会社の損益関係のイメージ

 

当期純損益に関する仕訳

A 当期純利益を計上する場合

例:小田原株式会社は、第一期の決算にて当期純利益¥300,000を計上した。

(借方)損益 300,000

(貸方)繰越利益剰余金 300,000

 

B 当期純損失を計上する場合

例:御殿場株式会社は、第一期の決算にて当期純損失¥300,000を計上した。

(借方) 繰越利益剰余金 300,000

(貸方)損益 300,000

 

剰余金について

剰余金には、資本剰余金と利益剰余金がある。

資本剰余金

資本取引によって生じた剰余金をいう。

資本取引とは、お金を集めるために生じた取引のことをいう。

資本剰余金にあてはまるものは、下記が挙げられる。

資本準備金

株式の払込金のうち、資本金としなかった金額

日商簿記3級て出題されるのは、この項目のみである。

この他にも、以下の資本剰余金がある。

その他資本剰余金

資本準備金以外の、資本に関する剰余金。

ここでは、説明を割愛する。

 

利益剰余金

利益に関する剰余金をいう。

利益剰余金は、繰越利益剰余金より計上される。

繰越利益剰余金

これまでの利益の総額に、当期の純損益を含めた金額

繰越利益剰余金の使い道は、次のとおりである。

配当金

出資者(株主)に対して配るお金。

株式保有数に応じて変動する。

 

利益準備金

将来の赤字に備えて準備するもの。

また、出資者(株主)に対して配当を行った場合に計上する。 

 

任意積立金

用途に応じて計上する積立金

例として、建物などの新築のために積み立てる新築積立金等がある。

なお、これらの剰余金については、株主総会にて決定される。

 

配当を行った場合の処理

配当金の原資は、繰越利益剰余金である。

この時点では配当金を支給していないため、未払配当金(負債の勘定)として処理する。

また、会社法により、配当を実施した際は資本金の1/4に達するまで、配当金の1/10を、準備金として計上することが定められている。

すなわち、出資者へ配当を行ったときは、資本金の1/4-(資本準備金+利益準備金)と配当金の1/10を比較し、少ない金額を利益準備金として計上する ということである。

例 三重物産株式会社は、株主総会にて下記のように繰越利益剰余金の処分が決定した。

配当金 ¥60,000
利益準備金 会社法にて定める額

※ なお、同社の資本金は¥1,000,000であり、現時点の資本準備金の計上額は¥50,000、利益準備金の計上額は¥30,000である。

(借方) 繰越利益剰余金 66,000

(貸方) 未払配当金 60,000

利益準備金  6,000

資本金の1/4までの金額
資本金の1/4 ¥250,000-(資本準備金¥50,000+利益準備金¥30,000)=¥170,000

配当金の1/10の金額
配当金¥60,000×1/10=¥6,000

両者を比較した場合、配当金の1/10の金額が少ないため、利益準備金の計上額は¥6,000となる。

なお、準備金に関する文言がない場合も、規定の準備金を計上する。

 

任意積立金を計上した際の処理

任意積立金を計上した場合は、〇〇積立金勘定を使用し、処理する。

※ 〇〇には、積立金の名目が入る。

例 水戸産業株式会社は、株主総会にて繰越利益剰余金の処分について、新築積立金¥300,000を積み立てることを決定した。

(借方) 繰越利益剰余金 300,000

(貸方) 新築積立金 300,000

 

以上、株式会社の損益・剰余金について、執筆しました。

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