本日は、定率法による減価償却費の計上について、執筆していきます。
定率法とは
定率法
固定資産の現在価値に一定の割合を掛けて算出する方法をいう。
この方法を採用した場合の減価償却費は、取得直後に多く計上し、年数経過ともに減価償却費が減っていくのが特徴である。
現在は、定額法の2倍の償却率を乗じる200%定率法を採用することが多い。
定率法による減価償却費のイメージ
図の緑線を見ると、年数が経過するごとに減価償却費が減少している。
定率法による減価償却費の計上
例題をもとに減価償却費を計上する。
取得原価¥300,000の備品の減価償却費を計上する。
ただし、減価償却の条件は下記のとおりである。
耐用年数:5年
残存価額:ゼロ
記帳法 :直接法
償却方法:200%定率法
減価償却費を算出するために、次の作業を行う。
1 償却率の算出
定額法を採用した場合の償却率
1(100%)÷耐用年数5年
=償却率0.2(20%)
定率法の償却率は定額法の200%であるため
0.2(20%)×2(200%)
=償却率0.4(40%)
2 減価償却費の算出
(現時点の固定資産価格-残存価額)×償却率
=減価償却費
よって、
取得1年目の減価償却費
(借方)減価償却費 120,000
(貸方)備品 120,000
取得2年目の減価償却費
(借方)減価償却費 72,000
(貸方)備品 72,000
・2年目の固定資産価格
¥300,000ー¥120,000
=¥180,000
・減価償却費算出
¥180,000ー¥0×40%
=¥72,000
取得3年目の減価償却費
(借方)減価償却費 43,200
(貸方)備品 43,200
・3年目の固定資産価格
¥180,000-¥72,000
=¥108,000
・減価償却費算出
¥108,000-¥0×40%
=¥43,200
取得4年目の減価償却費
(借方)減価償却費 25,920
(貸方)備品 25,920
・4年目の固定資産価格
¥108,000-¥43,200
=¥64,800
・減価償却費算出
¥64,800-¥0×40%
=¥25,920
取得5年目の減価償却費
(借方)減価償却費 15,552
(貸方)備品 15,552
・5年目の固定資産価格
¥64,800ー¥24,920
=¥38,880
・減価償却費算出
¥38,880ー¥0×40%
=¥15,552
耐用年数経過後で固定資産の簿価が¥23,328残っている。
固定資産の簿価
¥38,880-¥15,552
=¥23,328
このまま減価償却を実施しても、簿価が0になるまで多大な時間がかかる。
そこで、定率法による減価償却では、償却保証率が定められている。
そのため、減価償却費の割合が償却保証率を下回る場合、定められた償却率(改定償却率)を採用し、定額法にて減価償却費を計上する。
保証率と改定償却率とは
保証率
最低計上する取得原価に対する減価償却費の割合をいう。固定資産の耐用年数ごとに定められている。
償却率は下記の公式にて求められる。
償却率=
減価償却費÷(取得原価−残存価格)
改定償却率
定率法にて算出した減価償却費が、償却保証率を下回った場合の指定の償却率をいう。
改定償却率は、耐用年数ごとに定められている。
改定償却率を採用後は定額法にて減価償却をおこなう。
200%定率法の償却率・改定償却率・保証率のデータ(一部)
定率法による減価償却費の計上(改定償却率採用)
例題をもとに減価償却費を見ていこう。
取得原価¥300,000の備品の減価償却費(1年目〜5年目)を下記のデータをもとに計上する。
・耐用年数:5年
・残存価格:ゼロ
・償却方法:200%定率法
・記帳法 :直接法
なお、200%定率法の償却率・改定償却率・保証率に関するデータは下記の通りである。
1年目の減価償却費:¥120,000
2年目の減価償却費:¥72,000
3年目の減価償却費:¥43,200
4年目の減価償却費:¥32,400
5年目の減価償却費:¥32,400
1 減価償却費の保証額の算出を行う。
耐用年数5年の欄をもとに算出する。
(取得原価¥300,000−残存価格¥0)×保証率0.10800
=減価償却費保証額¥32,400
2 減価償却費を算出する。
1年目:
備品価格¥300,000×償却率0.4
=¥120,000
2年目:
備品価格¥180,000×償却率0.4
=¥ 72,000
※備品価格
¥300,000-¥120,000
=¥180,000
3年目:
備品価格¥108,000×償却率0.4
=¥ 43,200
※備品価格
¥180,000-¥72,000
=¥108.000
4年目:
備品価格¥64,800×償却率0.4
=¥25,920
しかし、4年目の減価償却費は減価償却費保証額¥32,400を下回っている。
よって、4年目以降は改定償却率を採用し、定額法にて減価償却費を計上する。
4年目、5年目:
備品価格¥64,800×改定償却率0.5
=¥32,400
※備品価格
¥108,000-¥43,200
=¥64,800
以上、定率法による減価償却費の計上について、取り上げました。
コメント